もりの小学校雑学→僕の前には

僕の前には・・・


 2001年平成13年8月ボクは日経新聞スクールホームページコンテスト受賞式のため東京にいた。
 グランプリを取ったボクは、前で挨拶をした。
 うれしくてなんだか泣きそうだった、でも泣かないつもりで、笑って壇から降りるつもりでステージに立った。
 目の前に、ボクより少し上だろうか、50を超したくらいの女の方がいた。なんだか涙を流している・・・それをみて、そっちを見ないようにと思った。
 「僕の前には道はない。ボクの後ろに・・・・」、高村光太郎の詩の一説を始めた。そのとたん・・・後ろにと振り返ったとたん、涙があふれて次が言えなくなった。これまでの苦労が、なんだか一気にあふれてきた。
 ページを作成してきたのは、誰かに評価してもらいたいためではなかった。塾もない山奥の子どもたちの学力が少しでも伸びれば・・・そんな思いで始めたインターネットのページだった。
 おまえは好きなことばかりやっていてダメだ、そんなことをしていると教員としての未来はない、親切な先輩からはそんなことを教えてもらった。
 それは分かっていたはずだ。でもそんな実践が、初めて認められたのはうれしかった。前を見て歩いたいるうちは大丈夫だった、それが振り返ったとたんに涙になった。
 授賞式後のミニパーティーで、「始まったとき、笑って終わるのかと思ったけど・・」と声をかけられた。そのつもりだったんだけど・・・と答えた。審査員からは、「トップ賞はすぐ決まりました。」「全部見るのに7時間かかりました。」と話しかけられたのもうれしかった。
 受賞者はみんな同じような苦労をしていた。苦労話に花が咲いた。女性はボクより少し年上の、やはり賞を受けた方の奥さんだった。同じような苦労を重ねているようだった。
 高校生の受賞者とも話をした。「そんなことやめろ。」と先生方に取り囲まれたという話もあった。
 2001年というのは、コンピュータを取り巻く環境はそんなふうだった。
 いつになったら、そうでなくなるのだろうか。
 (2003年8月)